智頭の山とモモンガ


智頭町は、鳥取県の東南部に在る、奈良県の吉野杉、京都の北山杉や秋田県の秋田杉と並ぶ杉の名産地として有名です。

中国山地の1,000メートル級の山々に囲まれた山間に位置し、町の面積の94%を森林が占め、江戸時代から林業が盛んな町です。地形も急峻な山肌を縫いながら、千代川(せんだいがわ)を通じて、鳥取砂丘を形成する源流です。

町内の山々には自然の広葉樹とともに、天然杉や人工林の杉や桧が立派に育ち、林業を支えています。特産である智頭杉は、標高1300mの沖ノ山に自生する杉の苗を母種とした雪害抵抗性の高い優良品種であり、積雪量の多い地でありながらも元気に植生が出来、木目が詰まった緻密で均質な優良杉材です。智頭杉の特長は、智頭の風土によるところが大きいのです。

西日本に位置していることから温暖な気候と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、中国地方を「山陽」と「山陰」に分断する中国山脈の中に位置する智頭町の標高は町の中心部が200mで、そこから岡山県境に向けての急峻な地形のなかで400m~500mの山間に集落が点在しています。冬には中心部でも50㎝程度の積雪を記録する年もあり、後述するモモンガが多く棲息している芦津地区では1mにもなります。

そんな厳しい寒さと山陰という日照時間が短い地形により、冬目が締まり、山の急な斜面に張り付いて、雪の重さにも耐える杉に粘りが生成され強い性質となります。

また、意匠的には、土壌の良さも加味され、心材部分を中心に淡い紅色の木肌も特徴です。

杉とモモンガ

モモンガが棲息するうえで、杉は大きな役割を果たしています!

くるくると愛くるしい大きな目が特徴のニホンモモンガ。リス科の夜行性の森林に棲む小動物で、本州・四国・九州の22府県で確認されています。
モモンガは主に標高300m以上に位置する山のなかで、針葉樹林、落葉広葉樹林、また両者の混合林の樹上で生活します。棲み家は、
古木などでキツツキなどが開けた木の洞のなかで暮らしています。

智頭の山の中で働く林業家のなかには、杉の木の上の方で小動物が木の洞から出入りしている姿を伐採作業中に散見することもあるとのことです。

智頭町のなかで高地となる標高300m以上の位置する芦津地区では、10年以上前から地元住民と公立鳥取環境大学の小林教授(動物行動学)とゼミ学生さん達が、モモンガの保護と調査観察研究を続けています。

その研究成果の一つとして、モモンガは杉の木が大好き!であることが分かっています。

芦津地区には人工林の杉が高く大きく立木しているのですが、同地区は冬になると1m以上の積雪がある厳しい自然環境にあり、そのなかで元気にモモンガが棲み続けられているのは、杉の木の存在のお陰なのです。
この芦津地区は以前、雑木林だったところに多くの杉が植林され、標高等の立地条件も相まってモモンガが多く棲息しているわけです。

「カーペット」
モモンガは杉などの木にあけられた洞を住処にします。
その家の中には‟杉の皮”をカーペットとして敷き詰めています。杉の皮は武骨に厚いガサガサしたものですが、それを丁寧に繊維状態に近くまで割いてほかほかのものにします。その中で子育てをするとともに冬の寒さから身を守ります。

「食事」
モモンガは食べ物でも杉が大好物です。とりわけ、杉の葉っぱや雄花(花粉)が大好きなのです。ただ、杉だけではミネラルが不足気味になるため、雑木林の若芽を啄みます。
なので極端に云えば、彼らの生活は杉の木の上で全てが一切賄えるということです。

小林先生は、モモンガをこよなく愛する研究家であり、彼らの生活改善策?として学生と芦津の住民と一緒になって、モモンガの巣箱を作っては設置してあげています。

モモンガと小林せんせい

モモンガなどの動物の行動学を研究されている小林朋道先生。

[謝辞&注釈:記事内容の一部並びに画像と動画は、公立鳥取環境大学・小林教授のご著書、ブログやツイッターから転載させて頂いています。この場をお借りして篤く御礼申し上げます。]

参考リンク先:小林先生のブログ「ほっと行動学」 &   「 ツイッター 」